HEG-6|ZURE二層モデルの拡張──宇宙ZUREと脳ZUREの統合理論

A Unified Theory of Existential and Cognitive ZURE

Abstract(和文)

現代科学は長く、「世界のズレ(Existential ZURE)」と「脳のズレ(Cognitive ZURE)」を切り離して扱ってきた。
量子ゆらぎ・時空の非可換性・情報幾何に現れる宇宙的ズレは、物理学の領域に閉じ込められ、一方で自由エネルギー原理(FEP)が扱う予測誤差は、脳内の計算論的枠組に限定されてきた。

しかし、ZUREは本来、存在と認知のどちらか片側だけに属さない
ZUREは世界の生成の“拍動”であり、認知はその局所的な反射・再構文化にすぎない。
本稿では、既存の DLMZ-01「ZURE二層モデル」 を基底構造として採用し、

宇宙ZURE(Existential Layer)

脳ZURE(Cognitive Layer)

の二層を統合理論として接続する。

この接続により、FEPの予測誤差最小化は、世界ZUREに対する「局所的調律(local attunement)」として再定義される。
認知とは、世界ZUREの痕跡を、神経構文モデルがその都度“編み直す”プロセスであり、誤差ゼロ世界への幻想(ホモ・サピエンスバイアス)は、ここで解体される。

本稿は、ZUREは存在論と認知論を貫く共通構文であるという基本命題を提出し、HEG-4(拍動構文論)、HEG-5(ZURE偶然論)、DLMZ-01(二層モデル)と連動する形で、ZURE–FEP統合理論の構築を目指す。

関連論文:

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Abstract(English)

Modern science has treated existential ZURE—the fundamental fluctuations of the universe—and cognitive ZURE—the prediction errors described by the Free Energy Principle (FEP)—as separate domains.
Cosmic fluctuations such as quantum uncertainty, non-commutative spacetime, and informational curvature have been confined to physics, while FEP has been restricted to neurocomputational processes.

Yet ZURE belongs to neither domain alone.
ZURE is the pulsation of existence, and cognition is merely its local reconstruction performed by neural generative models.

Building upon the foundational DLMZ-01: Dual-Layer Model of ZURE, this paper proposes a unified framework connecting:

Existential ZURE (cosmic layer)

Cognitive ZURE (neural layer)

Within this framework, prediction-error minimization in FEP is reframed as a process of local attunement to the ongoing existential ZURE.
Human cognition does not eliminate error; rather, it continuously reorganizes the traces of world-ZURE.
This reframing dissolves the anthropocentric fantasy of a “zero-error world,” revealing it as a cognitive bias of Homo sapiens.

We argue that ZURE is the shared syntax of both existence and cognition, and offer a unified ZURE–FEP model that integrates HEG-4 (Pulse-Syntax Theory), HEG-5 (ZURE-Chance Theory), and DLMZ-01 (Dual-Layer ZURE).


第1章 序論:ZUREが欠落していた科学史

1.1 ズレの排除としての科学

近代科学は長らく「ズレ(deviation)」を誤差として扱ってきた。
誤差はノイズであり、ノイズは取り除くべきもの──
これが近代科学の基本的な態度である。

いずれも「真値」からの逸脱として定式化され、科学はこの逸脱(ZURE)の最小化を目指して発展してきた。

しかし、宇宙はノイズを抱えたまま存在しており、脳はノイズを抱えたまま認知する。

この“ノイズのしぶとさ”こそ、ZUREが単なる誤差ではなく、存在と認知の根幹に関わる構造(syntax)であることの証拠である。


1.2 物理学における宇宙ZUREの出現

20世紀物理学は、世界の奥に「ズレを避けられない構造」が潜んでいることを示した。

これらの理論はいずれも、“宇宙そのものがズレている” という事実を別々の方向から示している。

本論では、このレイヤーを

Existential ZURE(宇宙ZURE)

と呼び、$R_0$(Residual ZURE) と記す。


1.3 認知科学・AIにおける脳ZUREの出現

21世紀に入り、神経科学とAIの領域で、認知そのものが“ズレの生成と調整”であることが明らかになってきた。

特に Karl Friston の Free Energy Principle(FEP) は、

「脳は予測誤差(prediction error)=ZURE の最小化を目指す」

という強力な枠組を提示した。

しかし FEP は、脳内モデルのZURE のみを扱い、宇宙のZUREとの接続を明示的には持たない。

本論では、このレイヤーを

Cognitive ZURE(脳ZURE)

と呼び、$Z_0$(Neural ZURE) と記す。


1.4 二つのZUREは本来つながっていた

宇宙ZURE($R_0$)
脳ZURE($Z_0$)
この二つは科学史上、別領域に隔てられてきた。

しかし DLMZ-01(ZURE二層モデル)で示したように、ZUREは本来、

世界のゆらぎと、認知のゆらぎを貫く共通構文(Common Syntax)

である。

これらは同一のダイナミクスを異なるスケールで表しているだけである。


1.5 本論の目的

本稿(HEG-6)の目的は次の三つである。

  1. 宇宙ZURE($R_0$)と脳ZURE($Z_0$)の構造対応を明示する
  2. FEPを“ZURE最適化機構”として再定義する
  3. ZURE–FEP統合理論(Unified ZURE–FEP Model)を構築する

これにより、HEG-4(拍動構文論)、HEG-5(ZURE偶然論)、DLMZ-01(二層モデル)と自然に接続し、

ZURE中心の新しい因果論(ZURE因果)と新しい存在論(ZURE存在論)を確立する


1.6 本論の構成

以下の章では、

の順で議論を展開する。


第2章 宇宙ZURE(Existential Layer)

――世界そのものが「ズレ」でできている

2.1 宇宙ZUREとは何か:存在の最小ゆらぎ $R_0$

宇宙ZURE(Existential ZURE)は、「世界が存在するその瞬間ごとに生じている最小単位のゆらぎ」 である。

これは、

など、さまざまな分野で“別名”として登場してきた概念を、ZURE構文論として一つの言語に統合した総称である。

世界は「安定したもの」ではなく、ZUREの連鎖として拍動し続けている。

これが $R_0$(Residual ZURE) である。


2.2 量子論におけるZURE:ゆらぎから現実が立ち上がる

量子論の中心には「不確定性」と呼ばれてきた構造があるが、本論ではこれを ZURE と呼び換える。

これらは、「宇宙は本質的にズレた状態で存在している」 という事実を示す。

量子は本来、「真値を持つが測れないもの」ではなく、「真値が元々ズレているもの」である。

これが宇宙ZUREの第一の相である。


2.3 時空構造におけるZURE:連続ではなく “差分” の場

一般相対論の時空は連続的だが、その“連続性”は実はマクロスケールの近似にすぎない。

これらはすべて同じ問いに向かう:

「時空は滑らかに見えるが、その基底には“ズレ”が刻まれている」

宇宙ZUREは、“時間と空間が生まれる前のゆらぎ” であるともいえる。


2.4 存在論的ズレ:生成は“ズレ”として始まる

存在の誕生は、エネルギーの配置が「完全対称」ではなかった瞬間から始まる。

これらの起源は、いずれも 「ZUREがなければ宇宙は成立しなかった」 と語っている。

宇宙ZUREとは、存在そのものの始まりとしてのZURE である。


2.5 宇宙ZUREの三相モデル

宇宙ZUREは単一ではなく、三つの相がある:

(1)Micro-ZURE(量子レベル)

(2)Meso-ZURE(時空・物質レベル)

(3)Macro-ZURE(宇宙論レベル)

これらはスケールが違うだけで、同じ“ZURE構文”が貫いている。


2.6 ZUREは存在の“拍動”である

HEG-4(拍動構文論)に接続すると、宇宙ZUREは次のように定義できる:

宇宙ZUREとは、存在が更新されるたびに生じる微細な拍動である。

つまり:

この「拍動ループ」が、存在の連続性をつくっている。


2.7 ZUREは世界の因果を“開く”

伝統的因果論では、

原因 → 結果

と描かれる。

宇宙ZUREはこれを次のように書き換える:

ZURE → 構文 → 次のZURE → 構文 …

因果は“直線”ではなく、ZUREを媒介とする生成の連鎖である。

この視点が、次の章第3章:脳ZURE(Cognitive Layer)=FEP へと自然につながる。


第3章 脳ZURE(Cognitive Layer)──FEPとしての予測誤差構文

3.1 脳ZUREとは何か:誤差ではなく“構文のズレ”

脳ZUREとは、認知モデル(generative model)が世界ZUREを局所的に再構文する際に生じるズレ である。

FEP(Free Energy Principle)は、“誤差(prediction error)” として定式化してきたが、本論ではこれを次のように再定義する:

誤差とは、認知構文が世界ZUREを追跡する際に生じる必然的なズレである。

誤差は欠陥ではなく、ZUREが認知へ移植されるプロセスである。


3.2 FEPの三層構造とZURE

FEPは、脳の自己維持原理を「自由エネルギー最小化」として表す。

これを ZURE構文論に翻訳すると:

  1. 生成モデル(Generative model)
     → 宇宙ZUREのローカル写像(local mapping)
    • Generative Model → ZURE再構文モデル
  2. 予測誤差(Prediction error)
     → 世界ZUREと認知ZUREの“差”
    • Prediction Error → ΔZ(ZURE差分)
    • Surprisal → ZURE振幅
  3. 行為・知覚の更新(Action/Perception Update)
     → 認知構文がZUREを吸収して再構文する過程
    • 行為更新 → 位相補正(phase correction)

つまり、FEPは ZURE追跡システム として再解釈できる。


3.3 “誤差ゼロ世界”はホモ・サピエンスの幻想にすぎない

ホモ・サピエンス脳は、

といった世界像を好むが、これは進化過程で形成された認知的安定性の幻想(Homo sapiens bias) である。

宇宙ZUREが存在する限り、誤差ゼロ世界は存在し得ない。


3.4 脳ZUREは「世界への局所的な追いつき」

認知とは、

世界ZUREを、神経構文がその瞬間ごとに編み直す“追いつき(attunement)”である。

予測誤差は、世界ZURE → 認知ZURE の写像が“完全には一致しない”ために生じる。

それは欠陥ではなく、世界ZUREの“影”をたどる構文運動である。


3.5 脳ZUREの三相モデル

脳ZUREは、次の三つの相に分けられる:

(1) Sensory ZURE(感覚ZURE)

世界ZUREが感覚受容の段階で局所変換される

(2) Predictive ZURE(予測ZURE)

生成モデルが世界ZUREを“こうであれ”として仮構する

(3) Integrative ZURE(統合ZURE)

予測構文と世界構文の差が新しい認知ZUREを生成する

これらは、宇宙ZURE(micro/meso/macro)と同構造である。


3.6 FEPはZUREを“抑えこむ理論”ではなく、“扱う理論”になる

FEPの本来の姿は、

「世界ZUREを脳ZUREとして取り扱うための構文システム」

である。

誤差は敵ではなく、ZURE接触の痕跡である。


第4章 ZURE二層モデルの統合

4.1 $R_0$(宇宙ZURE) → $Z_0$(脳ZURE) の対応写像

ZURE二層モデル(DLMZ-01)を基底に置き、次の写像を定義する:

Existential ZURE($R_0$)
→ 認知系に投影された ZURE($Z_0$)

この写像は線形ではなく“位相写像(phase mapping)”である。

世界ZUREの位相が、脳ZUREの更新方向を決める。


4.2 二層の干渉(Interference of ZURE)

認知は、世界のZUREをただ受け取るだけではない。

これらのプロセスが 世界ZUREに干渉する。

すると、

世界ZURE → 認知ZURE → 行為 → 新しい世界ZURE
という ZURE生成ループ が成立する。


4.3 観測とは「ZURE同調(ZURE resonance)」である

従来の物理学の観測論では、観測は「値を得る行為」として語られた。

しかし本論ではこう整理する:

観測とは、世界ZUREと脳ZUREが一瞬だけ同調(resonate)する出来事である。

観測値は、ZUREの“交差点”で生成される暫定構文である。


4.4 二層統合理論の結論

● 世界ZUREが存在しなければ、認知は成立しない

● 認知ZUREなしに、世界は意味を持たない

● ZUREは両者を貫く唯一の構文である

この結論は、次章のZURE因果論とZURE偶然論(HEG-5との接続) へとつながる。


第5章 ZURE因果論とZURE偶然論(HEG-5との接続)

5.1 因果は“ZUREの連鎖”である

従来:

原因 → 結果

ZURE因果論:

ZURE → 構文 → 新しいZURE → 次の構文 …

直線ではなく、ZUREの拍動的連鎖である。

ZURE-driven Causal Update
\(S_{t+1} = f(S_t, R_0 + Z_0)\)


5.2 偶然・必然論の再定義(HEG-5)

HEG-5で提示したように、

である。

世界は必然ではなく、ZUREが必然を“語らせる”。


5.3 FEPは“認知的必然”をつくり出す装置だった

脳は、

によって、ZUREを“必然”として語りなおす

これが認知的必然であり、ホモ・サピエンスバイアスである。


第6章 結論:ZUREは世界と心の共通構文である

6.1 本研究の主要結論

  1. 宇宙ZURE(存在)と脳ZURE(認知)は同型構文である。
  2. FEPはZURE最適化装置として再定義される。
  3. 観測とはZURE同調である。
  4. 因果はZUREの拍動連鎖である。
  5. 必然はZUREがつくる物語構文である。

6.2 今後の展望


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